オペアンプを用いたType3補償器の定数決定

制御

 電源制御では、Type3補償器がよく用いられる。Type3補償器はオペアンプで実現でき、その定数の求め方について記載する。

オペアンプを用いたType3補償器の回路図

 Type3補償器の回路図は以下のようになる。

オペアンプを用いたType3補償器の回路図
図 オペアンプを用いたType3補償器の回路図

Type3補償器の伝達関数と各定数を求める式

 Type3補償器の伝達関数は以下のようになる。文献によって伝達関数の表現方法が異なるが、今回は後述する参考図書に基づいて以下の式とする。\( \omega_{z1}\)の部分で違和感があるかもしれないがこれで正しいです。

$$ G(s) = G_0 \cdot \frac{ \left( 1 + \frac{\omega_{z1}}{s} \right) \left( 1 + \frac{s}{\omega_{z2}} \right) }{ \left( 1 + \frac{s}{\omega_{p1}} \right) \left( 1 + \frac{s}{\omega_{p2}} \right) } $$

$$ \begin{align} 
&G_0 = \frac{R_2 C_1}{R_1 (C_1 + C_2)} \\
&\omega_{z1} = \frac{1}{R_2 C_1} \\
&\omega_{z2} = \frac{1}{(R_1 + R_3) C_3} \\
&\omega_{p1} = \frac{C_1 C_2}{R_2 (C_1 + C_2)} \\
&\omega_{p2} = \frac{1}{R_3 C_3}
\end{align} $$

 上式において、R1、R2の値を固定しその他の定数を求めると下記となる。なお、角周波数は\( \omega=2\pi f \)で周波数に変換している。

$$ \begin{align}
C_1 &= \frac{1}{2\pi f_{z1} R_2} \\
C_2 &= \frac{C_1}{2\pi f_{p1} C_1 R_2 – 1} \\
C_3 &= \frac{1}{2\pi f_{p2} (R_1 + R_3)} \\
R_3 &= \frac{R_1 f_{z2}}{f_{p2} – f_{z2}}
\end{align} $$

実際にType3を設計してみる。

 ゲイン\(G_o=1\)として、R1=10kΩ、R2=10kΩとする。零点周波数\(f_{z1}, f_{z2}=1kHz\)、極周波数\(f_{p1}, f_{p2}=100kHz\)として、上式に代入すると、各定数は以下となる。

$$ \begin{align}
f_{z1} &= 1 \,kHz \\
f_{z2} &= 1 \,kHz \\
f_{p1} &= 100 \,kHz \\
f_{p2} &= 100 \,kHz \\

R_1 &= 10 \,k\Omega \\
R_2 &= 10 \,k\Omega \\
C_1 &= 15.9 \,nF \\
C_2 &= 0.16 \,nF \\
C_3 &= 15.9 \,nF \\
R_3 &= 101 \,\Omega
\end{align} $$

LTspiceで周波数特性を確認してみる。

 計算で求めたType3補償器の周波数特性を示す。極小値が零点周波数\(f_{z1}, f_{z2}=1kHz\)、極大値が極周波数\(f_{p1}, f_{p2}=100kHz\)になっており、仕様通りになっていることが確認できた。

オペアンプを用いたType3補償器の周波数特性
図 Type3補償器の周波数特性



近似式だと定数を決定できない。

 零点各周波数と極周波数の近似式が書いてある書籍が多くある。ただ、実際に近似式を使って各コンデンサと抵抗の定数を決定しようとすると値が一意に定まらない。定数を決定する際は、上式を用いる必要がある。

参考図書

 今回のType3補償器の数式等は、主に下記書籍を参考にした。

「Designing Control Loops for Linear and Switching Power Supplies: A Tutorial Guide」
Christophe Basso (著)

 海外では、電源制御のバイブル的なものと聞きました。本当かはわかりませんが、細かい式の成り立ち、導出が載っているのでリファレンス用として重宝しています。
 日本語の書籍も多くあるが、数式が微妙に間違っていたりするので確認用でこの本を用いています。洋書で全部読むと大変なので、日本語書籍で勉強して、必要な部分を追加で勉強するのが良いかなと思います。

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